• 2023.07.27
  • 中毒

22:チョコレート【犬】【中毒】

カカオ豆を原料とするチョコレートにはカフェインやテオブロミンが含まれており、中神経系を興奮させる作用があり犬に中毒を起こします。

概要

カカオ豆を原料とするチョコレートにはカフェインやテオブロミンが含まれており、中神経系を興奮させる作用があり犬に中毒を起こします。

臨床徴候(症状)

嘔吐と下痢のほか中枢神経系の興奮による興奮や発作、1分間に心拍数が200回を超える頻脈が特徴的です。 重度だと摂取から12-48時間後に心不全や昏睡を起こし死亡することもあります。

原因物質

カカオ豆に含まれるメチルキサンチンアルカロイドである、カフェインとテオブロミン

中毒量

テオブロミンLD50 犬250-500mg/kg 猫 200mg/kgと報告されています。 カフェインLD50 犬140mg/kg 猫80-150mg/kgとされています。猫では中毒の報告が少ないです。 犬のカフェインとテオブロミンの最小致死量は100-200mg/kgとされますが、軽度の症状は20mg/kg程度から見られるので注意が必要です。チョコの種類により含まれるメチルキサンチン類の量は異なり、ミルクチョコレート1gではテオブロミン+カフェインの量はおよそ2mg程度となります。 板チョコ1枚50gとすると含まれるメチルキサンチンは100mg程度となります。軽度の症状は犬1kgあたり20mg程度からみられるので,3kgの犬が板のミルクチョコレートを1枚食べてしまうと中毒を起こす可能性があります。 海外で行われた研究では,一般的にみられるチョコレートに含まれるテオブロミンの量を測定したところ、以下のようになりました。ホワイトチョコレートでは検査で用いた手法では検出限界以下となりました。ダークチョコレート:8.83 mg/g、ミルクチョコレート:1.2 5mg/g、ホワイトチョコレート:検出限界以下 もし犬がチョコを食べたとしても、ダークチョコレートを食べた時とホワイトチョコレートを食べた時では摂取するメチルキサンチンの量も大幅に変わり、治療や予後の予測に役立ちます。どんなチョコレートをどのくらい食べたのかは受診の際に伝えられるようにしておくとよいでしょう。わからない場合は犬が食べたと思われるパッケージを持参するだけでも役に立ちます。

中毒を起こしやすい犬種・動物種

小さい犬では少ない量でも中毒量に達する可能性があり危険です。子犬は好奇心が旺盛なので人間のお菓子にも興味を持ちやすいため注意が必要です。猫ではチョコレート中毒は稀とされています。おそらく嗜好性によるものと推察されます。

催吐の必要性

摂取して早期なら吐かせてチョコレートを除去するのが有効です。活性炭も有効です。早い方が良く、摂取から2~4時間以内に活性炭を投与するのが推奨されています。

治療

体からチョコレートを取り除くために吐かせたり活性炭を飲ませる対応のほか、利尿を促すための輸液などの除染や、頻脈や発作などの症状を抑える対症療法の組み合わせが治療になります。尿中のメチルキサンチンは膀胱から再吸収されるので、頻回の導尿により膀胱を空にする処置も有効とされます。

注意すべきこと

2017年に発表されたヨーロッパとイギリスで発生した犬のチョコレート中毒の回顧的な研究では、イースターとクリスマスの時期の発生が多く、この時期はチョコレートを使った菓子の購入が増えて犬が接触しやすくなるためではと考察されています。日本でもクリマスやバレンタインではチョコレートを使ったケーキやお菓子の販売が盛んになりますから、注意が必要でしょう。 また、犬のテオブロミンの半減期は17.5時間で、カフェインの半減期は4.5時間となっています。テオブロミンでは体から排出されるまでの時間が長く、摂取後数日は注意深く観察します。

参考

  • TILLEY, Larry P.; SMITH JR, Francis WK (ed.). Blackwell's five-minute Veterinary consult: canine and feline. John Wiley & Sons, 2015.
  • NOBLE, Peter-John M., et al. Heightened risk of canine chocolate exposure at Christmas and Easter. The Veterinary Record, 2017, 181.25: 684.
  • MENG, Cheng Chia; JALIL, Abbe Maleyki Mhd; ISMAIL, Amin. Phenolic and theobromine contents of commercial dark, milk and white chocolates on the Malaysian market. Molecules, 2009, 14.1: 200-209.