- 2023.06.28
- 中毒
14:食塩【犬】【猫】【その他】【中毒】
概要
食塩が多く含まれる物質を誤飲すると高ナトリウム血症に起因する食塩中毒を起こす可能性があります。海外の文献では手作り子供用粘土(play dough)による犬の食塩中毒の報告があります。日本で注意を要するものとして、おつけものや梅干しがあります。梅干しは塩分濃度が高い上に種は凹凸が多く消化管壁にはまりやすい形をしています。梅干しを誤飲した場合は食塩中毒と種による消化管閉塞の2つの危険があります。日本では小型犬が多いので、腸管が細い小型犬では種が詰まる可能性も高く注意が必要です。
臨床徴候(症状)
食塩は消化管を刺激しますので最初に嘔吐など消化器症状が見られます。その後に昏睡など神経症状が起こります。神経症状まで起きてくると、救命できないケースが増えてきます。
原因物質
食塩(食べ物のほか子供用の粘土によるペットの食塩中毒も報告されています)
中毒量
犬において高ナトリウム 血症の症状は1kgあたり2〜3gの食塩の摂取で発現し、4g以上の摂取が致死量と考えられます。梅干し1粒10gのものだとおよそ0.72gのナトリウム が含まれており、3kgの犬だと8個程度摂取するということになり、梅干し単体で高ナトリウム 血症になる可能性は低いですが種は1粒でも閉塞を起こす可能性があります。 梅干しの大きさや重さは、メーカーや使用している梅によって違います。
中毒を起こしやすい犬種・動物種
小型犬では中毒量も少なくなるので,少量の摂取でも中毒を発現する可能性があります。
催吐の必要性
摂取して短時間であれば胃を空にするのは有効です。
治療
脱水や細胞内の電解質が大幅に乱れているので、それを補正するための点滴などを行います。急激にナトリウム濃度を下げると水が脳に移動して脳の浮腫を起こすことがあるので、ゆっくり補正していきます。
注意すべきこと
家庭でもできるペットの催吐の方法として食塩をとらせる方法が昔からあり、場合によっては有効かもしれませんがこのように食塩による中毒を起こす可能性があること、またなかには次亜塩素酸のように催吐が禁忌のものも多くあるため自己の判断で塩を用いて吐かせることは著者は推奨しません。受診する予定の獣医師に相談し、指示を仰ぐことをおすすめいたします。
参考
- POUZOT, Céline, et al. Successful treatment of severe salt intoxication in a dog. Journal of Veterinary Emergency and Critical Care, 2007, 17.3: 294-298.
- BARR, J., et al. Review of 14 cases of hypernatremia secondary to home made play-dough ingestion in dog from 1998 to 2001. J Vet Emerg Crit Care, 2004, 14.3: 196-202.
- 日本食品標準成分表2020年版(八訂)https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl 2023/02/12参照