• 2023.07.21
  • 中毒

20:お魚関係で注意したい中毒【犬】【猫】【その他】【中毒】

チアミナーゼは生の魚や貝に多く含まれ、犬や猫にチアミン(ビタミンB1)欠乏を起こす恐れがあります。

概要

チタミン(ビタミンB1)は糖の代謝に重要な働きをするビタミンです。チアミンは主に穀類や米糠やフスマ、酵母に存在します。哺乳類の動物では体内で合成できないので、チアミンが含まれる食餌をとらなければなりません。チアミン欠乏症は犬より猫で起こりやすいです。なぜなら犬は食餌100kcal中29μgのチアミンを,猫では犬よりも大幅に多い100kcal中125μgものチアミンを必要とするためです。チアミンの過剰摂取による毒性はなく、欠乏症を発症した時は速やかにチアミンの投与(注射)を行います。

臨床徴候(症状)

歩行困難のほか元気消失、食欲不振、痙攣、起立不能、昏睡がみられます。重度な場合は速やかにビタミンB1の投与を開始しなければ死亡することもあります。

原因物質

チアミン欠乏症の原因物質は魚介類に含まれるチアミナーゼ(アイノリナーゼ)です。マイワシ、カタクチイワシ、サンマの内臓のほか、コイやフナ、ウグイなどの淡水魚の内臓にも存在することが知られています。

中毒量

魚の種類や部位により含まれるチアミナーゼの量は異なるため、加熱していない魚介類は避けるのが良いでしょう。

中毒を起こしやすい犬種・動物種

ビタミンB1欠乏は全ての犬種で発生します。猫も発症しますし、それ以外にもカメ、狐、ミンク、牛、羊などさまざまな動物が起こします。

催吐の必要性

不明です。

治療

チアミン(ビタミンB1)の投与を速やかに行います。

注意すべきこと

市販のフードには十分な量のチアミンが含まれていますので、フードを中心に与えている生活ではチアミン欠乏症の心配は少ないです。しかし、チアミナーゼを含む魚介類を与える場合はチアミン欠乏症を引き起こす可能性があります。チアミナーゼを含む魚であっても筋肉の部位にはチアミナーゼは少ないので、生の内臓は特に避ける必要があります。 魚の筋肉の部位にはヒスチジンが多く含まれ、細菌によってヒスタミンが産生されてヒスタミン中毒を起こすことがあるので注意が必要です。

参考

  • 左向敏紀,阿部又信,左向敏紀,大島誠之助,森昭博,徳本一義,百田豊,獣医学教育モデル・コア・カリキュラム準拠 臨床栄養学,interzoo, 2015
  • 西宗高弘, et al. アノイリナーゼの研究 食品による栄養摂取傷害の一例:(4) 畜産分野におけるアノイリナーゼ関連疾患. 1999.
  • 左向敏紀; 大島誠之助. 禁忌食 (その 4)—魚介類 (チアミナーゼ). ペット栄養学会誌, 2014, 17.1: 44-45.
  • KRITIKOS, Georgia; PARR, Jacqueline M.; VERBRUGGHE, Adronie. The role of thiamine and effects of deficiency in dogs and cats. Veterinary Sciences, 2017, 4.4: 59.
  • 日本獣医師会 カメ, http://nichiju.lin.gr.jp/small/handbook/2-kame.pdf , 2023/03/07参照
  • 藤田真吾; 大橋徹. マイワシ投与によるハマチの疾患について. 1978 , https://www.pref.kyoto.jp/kaiyo/documents/kenpou2-18.pdf 2023/05/12参照