• 2023/05/09
  • 中毒

アスピリン【犬】【猫】【その他】【中毒】

アスピリン

中毒2 犬と猫に中毒を起こす物質:アスピリン 概要:人間の解熱鎮痛剤としてドラッグストアなどで入手できるアスピリンも犬猫が誤飲し中毒を起こす可能性のある物質です。低容量(体重1kgに対してアスピリン0.5mg~5mg程度)では犬や猫(猫では1kgあたり1mgを3日おきでさらに低容量)の抗血栓症に用います。犬では体重1kあたり25mg程度から消化管出血などの有害事象が出始めます。人用のものは1錠300mg程度であり,体の小さなペットの体重では多すぎます。

症状

アスピリンを過剰摂取すると,呼吸中枢が刺激されることで生じる頻回の呼吸や消化管潰瘍など様々な症状を示します。 頻呼吸は体の電解質バランスを乱し,昏睡など中枢神経に関する症状がみられる場合もあります。

原因物質

アスピリン

中毒量

アスピリンは量が多ければ多いほど作用が強くなります(用量依存的)。そして消化管障害を引き起こします。アスピリン25~35mg/kgで犬の消化管出血が確認されています。

注意を要する動物種・犬種

小型犬では中毒量も少なくなるので,少量の摂取でも中毒を発現する可能性があります。

催吐処置の有効性

有効です。摂取してから処置が早ければ早いほどよく,時間が経ってしまうと胃から腸に流れてしまい体に吸収されてしまいます。

治療

胃を空にしたり活性炭を投与したりして体からアスピリンを取り除く処置や,脱水の解消のための輸液や電解質の補正,消化管保護剤の投与などがあります

注意すべきこと

アスピリンが犬猫にとってなにもかも毒のある物質かというとそうではなく,犬のフィラリア症や大動脈血栓塞栓症など血栓が体にできてしまった場合の治療薬として用いられることもあります。 例えば犬では体重1kgあたり0.5~5mgを投与して血栓を溶かす治療があります。(猫では体重1kgあたり1mgを3日おき)。 このように動物病院では動物の状態によりアスピリンを治療として用いるケースもありますが,家庭にあるアスピリン製剤は犬猫にとって用量がかなり多いです。犬や猫では数mg程度の薬用量ですが,成人の解熱鎮痛剤としての薬用量は1回500mg~1500mgなのです。市販されている某アスピリン製剤Aは1錠中に330mgのアスピリンが含まれています。別のアスピリン製剤Bは1錠中300mgほど含有しています。 1錠でも飲んでしまったり,飲んだ疑いがある場合は様子を見ずにすぐに動物病院を受診する必要があります。 人用の薬は棚にしまうなどして誤飲されないように気を付けましょう。

参考

  • 髙久 史麿 (監修), 堀 正二 (編集), 菅野 健太郎 (編集), 門脇 孝 (編集), 乾 賢一 (編集), 林 昌洋 (編集),治療薬ハンドブック2022,2022,じほう
  • 中山智宏, 佐伯潤, 長崎淳 監修, 日小獣 薬用量マニュアル 第5版, 2021, 学窓社
  • 國谷 貴司, 須部 明香, 金村 典哉, 渡辺 直之, 大動脈血栓塞栓症の犬4例の臨床症状及び臨床病理学的所見, 日本獣医師会雑誌, 2014, 67 巻, 2 号, p. 137-141, 公開日 2014/03/20, Online ISSN 2186-0211, Print ISSN 0446-6454, https://doi.org/10.12935/jvma.67.137, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvma/67/2/67_137/_article/-char/ja
  • British Small Animal Veterinary Association, Veterinary Poisons Information Service.
  • 久和茂(監訳),森川玲(訳),犬と猫の毒物ガイド,2018, 学窓社
  • JOHNSTON, Spencer A., et al. The effect of misoprostol on aspirin‐induced gastroduodenal lesions in dogs. Journal of veterinary internal medicine, 1995, 9.1: 32-38.