- 2023.01.01
- 中毒
キシリトール【犬】【中毒】
概要:人には安全性の高いキシリトールですが,犬では微量でも強いインスリン 放出刺激があり1kgあたり0.1g〜0.5gで低血糖や肝不全を起こすことがあります。市販のキシリトールガム1粒には0.5g程度含まれているものもあるので誤飲しないよう注意が必要です。
臨床徴候(症状)
人ではキシリトールが体に取り込まれて最高血漿濃度に達するのに3〜4時間程度要しますが,犬では摂取後30分以内に最高血漿濃度に達します。 そのため摂取後30分〜60分程度で低血糖による嘔吐がよくみられ,昏睡や傾眠などの症状を呈します。肝障害による肝酵素の上昇は数時間から24〜48時間程度遅れて出ることも知られています。
原因物質
キシリトール。キシリトール は砂糖と同じ程度の甘さをもつにもかかわらず,砂糖が1gあたり4kcalなのに対しキシリトールは2.4kcalと低カロリーであり虫歯の原因になる酸を作り出さないことから甘味料としてもよく用いられます。 インスリンとは膵臓から放出されるホルモンで,血中の糖=グルコースを細胞内に取り込ませる作用があり,血糖値を一定に保つ働きをしています。 犬ではキシリトールは同じ量のグルコースに比べて2.5倍から7倍(!)のインスリン 放出刺激作用があり血中の糖が取り込まれ低血糖に陥ります。
中毒量
キシリトールは人やアカゲザル,ウマやラット では安全性が高く人では膵臓のインスリン 放出刺激作用も殆どなく,1日に130g以上摂取しても下痢を起こすだけとされます。しかし,犬では毒性があり,体重1kgあたり0.1gの摂取で低血糖を起こし,0.5g以上の摂取では肝細胞の壊死を起こし肝不全を生じます。
中毒を起こしやすい犬種
小型犬では中毒量も少なくなるので,少量の摂取でも中毒を発現する可能性があります。
治療
キシリトール は活性炭への結合性が低いため,通常は使用されません。低血糖の治療のため血糖値を注意深く監視し、必要に応じてブドウ糖を補給することは、キシリトール中毒の管理に重要です。SAMeおよびNACなどの肝保護剤の使用、最低2~3日の肝パラメータのモニタリング、そのほか容態に応じて制吐剤や抗生剤も使用されることがあります。
注意すべきこと
スーパーやコンビニで市販されている某キシリトール入りガムは1粒中0.5gのキシリトールが含まれています。 トイプードル などでも多い3kgの犬では1粒食べただけで低血糖を起こす可能性があります。実際に症状を発現する中毒量には個体差がありますが,キシリトール入りの食べ物が家にある場合はわんちゃんの口に入らないように注意が必要です。
参考
- Schmid RD, Hovda LR. Acute Hepatic Failure in a Dog after Xylitol Ingestion. J Med Toxicol. 2016 Jun;12(2):201-5. doi: 10.1007/s13181-015-0531-7. PMID: 26691320; PMCID: PMC4880608.
- Schmid RD, Hovda LR. Acute Hepatic Failure in a Dog after Xylitol Ingestion. J Med Toxicol. 2016 Jun;12(2):201-5. doi: 10.1007/s13181-015-0531-7. PMID: 26691320; PMCID: PMC4880608.