• 2023.05.29
  • 中毒

3:エチレングリコール【犬】【猫】【その他】【中毒】

代替テキスト

臨床徴候(症状)

摂取したあと時間と共に症状が移り変わっていきます。飲み込んで30分〜12時間頃は嘔吐や元気消失,多飲多尿などがみられ,おしっこが出なくなる欠尿や高窒素血症など重篤な腎障害を起こします。

原因物質

エチレングリコール

中毒量

犬は1kgあたり6.6mlが致死量。猫はもっと鋭敏で1kgあたり1.4mlが致死量。

中毒を起こしやすい犬種・動物種

犬種に関係はなく,全ての年齢で誤飲は発生します。海外の成書では平均3歳と記載されています。

催吐の必要性

エチレングリコールは吸収が早いため,摂取後30分〜1時間以内であれは嘔吐の誘発(催吐)や胃洗浄,チャコールの投与も有効ですが,時間が経ってからでは推奨されません。

治療

エタノール や解毒剤fomepizoleも有効ですが,体内で代謝されて腎臓に障害を与えるシュウ酸カルシウムができる前に投与しなければなりません。点滴など補助療法を行います。

注意すべきこと

猫ちゃんの中には流れる水を好む子がいます。水洗トイレでは流したときにタンクの上の水がでるのですが、それを舐める猫ちゃんもいます。そこに設置するトイレの芳香剤に安定剤としてエチレングリコールが使われることがあります。手洗い管自体は水道から水を引いているのでそこから出る水を飲む分には芳香剤の成分が溶け出した液体は含まれていませんが、芳香剤を通過してエチレングリコール を含んだ水が跳ねたり、たまった水を飲んだりする可能性も否定はできません。エチレングリコール が含まれない芳香剤を取り入れるか、あるいは芳香剤の使用は避けるのもよいかもしれません。 因果関係が証明されず確定はできませんが、シュウ酸カルシウムが代謝物となる物質を摂取して急性腎不全を起こす完全室内飼いの猫ちゃんは存在しており、トイレの芳香剤や保冷剤の成分など猫ちゃんの周りに存在するものはできるだけ成分を確認してからおいたり、いちいち調べるのが難しい時は一括して扉付きの棚に入れるなど猫ちゃんの口が届かない場所に設置・保管するのが良いと思われます。 ※名前が似ていますがポリエチレングリコールは犬の椎間板ヘルニアなどの脊髄損傷や猫の便秘の治療にも使われます。isfmからも安全性についての文献が出ています https://journals.sagepub.com/doi/10.1016/j.jfms.2011.05.017  

参考

  • SCHWEIGHAUSER, Ariane, et al. Ethylene glycol poisoning in three dogs: Importance of early diagnosis and role of hemodialysis as a treatment option. Schweiz Arch Tierheilkd, 2016, 158.2: 109-114.
  • TILLEY, Larry P.; SMITH JR, Francis WK (ed.). Blackwell's five-minute Veterinary consult: canine and feline. John Wiley & Sons, 2015.