• 2023.07.18
  • 中毒

18:殺鼠剤:ワルファリン【犬】【猫】【その他】【中毒】

日本でも汎用されるワルファリンやその仲間のジフェチアロールは貧血を起こす可能性があります。

概要

建物に出没するネズミが増える春や秋はネズミの駆除が活発になる時期でもあります。海外の教科書では春や秋に殺鼠剤を食べた犬や猫の中毒例が増えると記載されています。 殺鼠剤にはさまざまな物質が使われていますが,ここでは日本で使用されることの多い抗凝固剤(ワルファリン,ジフェチアロール)についてご紹介します。抗凝固剤は出血しやすくすることで失血死にいたらしめるもので,同じ哺乳類である犬や猫にも影響があります。

臨床徴候(症状)

貧血やそれに付随する呼吸困難、 血腫(腹側や採血部位にできることが多い。)、可視粘膜蒼白、無気力などです。

原因物質

抗凝固剤であるワルファリンやジフェチアロールにより,血液の凝固に必要なビタミンK1を枯渇し出血しやすくなります。

中毒量

犬ではよく研究されており、半数致死量(LD50)が設定されています。投与した動物のうち半分が死亡する量で、一般的には致死量ということになります。 ワルファリンLD50犬4mg/kg 、ジフェチアロールLD50犬4mg/kgとされています。 犬や猫ではワルファリンは血栓を溶かすお薬としても用いられています。ワルファリンは犬の抗凝固剤として0.05~0.2mg/kg の幅で使います。

中毒を起こしやすい犬種・動物種

犬と猫、いずれも種類や性別による差なく中毒を起こす可能性があります。若い犬や猫では好奇心旺盛な個体が多く注意が必要です。

催吐の必要性

摂取して時間が経っていなければ催吐して吐かせたり活性炭を投与して吸着するのは有効です。

治療

ビタミンK1の投与のほか、状態によっては輸血も考慮します。

注意すべきこと

殺鼠剤には抗凝固剤の系列であるワルファリンやジフェチアロール以外の化合物が使用されていることがあります。日本では抗凝固剤系が多いですが、海外製品では異なる系統の製品が用いられていることもあるので、誤食してしまったケースで手に入る場合はパッケージを持っていきましょう。 採血や注射する時は出血を減らすため細い針を使います。 海外の教科書では殺鼠剤が使われるのが増える春と秋に中毒例が増えると記載されています。

参考

  • TILLEY, Larry P.; SMITH JR, Francis WK (ed.). Blackwell's five-minute Veterinary consult: canine and feline. John Wiley & Sons, 2015.
  • KEGG,ジフェチアロール,https://www.genome.jp/dbget-bin/www_bget?dr_ja:D09807 2023/03/03参照
  • NEFF‐DAVIS, CAROL A.; DAVIS, LLOYD E.; GILLETTE, EDWARD L. Warfarin in the dog: pharmacokinetics as related to clinical response. Journal of veterinary pharmacology and therapeutics, 1981, 4.2: 135-140.
  • 第5版 日小獣 薬用量マニュアル