• 2023.08.08
  • 中毒

26:ディート(虫除け成分)【犬】【中毒】

ディート単体の犬の毒性試験では死亡例はないものの、食欲不振やけいれんなどの症状が見られています。ディート単体の場合でも犬が被毛などをなめないようにさせましょう。

概要

ディート10 %製品を人腕に塗布し風で乾かした後、ネッタイシマカのいるケージに腕を入れて5 分間の蚊の行動をみた実験では忌避効力持続時間は4.2時間でした。ペットに対する製品もあることから,飼い主様もペットに対して安全かどうか気にされている方もいらっしゃることかもしれません。海外ではピレスロイド系殺虫剤との混合スプレーも販売されているようで、それによる中毒の報告はあります。ディート単体の毒性試験では死亡例はないものの食欲不振やけいれんなどの毒性が見られていることから,ディート単体の場合でも犬が被毛などをなめないようにさせましょう。

臨床徴候(症状)

1年間ディートを0mg/kg/day,100mg/kg/day,400mg/kg/dayで犬に投与した試験では,1頭の犬に投与後30分以内に運動失調、異常な頭部運動、けいれんが投与期間中複数回みられ、ディートの高用量と関連していると考えられています。また、400mg/kg/dayの投与を受けた複数の犬では体重の減少や、試験開始初期の食欲の低下もみられています。 血液学的変化も認められています。400mg/kg/dayではヘモグロビンとヘマトクリットが6ヶ月と12ヶ月の時点でわずかに減少しており(雌雄ともに),ALPの増加が6ヶ月、12ヶ月時点でみらました。コレステロール の低下(雌雄)やカリウムの上昇(雄)もみられたものの、実験に用いられた犬たちは1年間の研究期間死亡例はなく過ごしました。 実験ではなく中毒に関する報告ではディート単体のものは少なく,ピレスロイド系との合剤での中毒が報告されています。中毒による犬や猫の臨床徴候は軽度(食欲不振、嘔吐)、中度(流涎低下、かすみ目)、高度(発作、昏睡)となっている(著者注:この症状はディートとの配合剤ではあるため、ディートによる影響も除外できないが主にピレスロイド系の薬剤の影響が大きいと思われる)。

原因物質

ディート(deet)、別名 N,N-diethyl-m-toluamide, ジエチルトルアミド

中毒量

実験では犬1kgあたり7μgのグラヤノトキシンの非経口投与で嘔吐が起こることが確認されています。また,迷走神経を切断した(vagotomized)犬では1kgあたり20μgの投与で呼吸刺激や呼吸抑制など呼吸不全が生じることも報告されています。経口での中毒量については本記事著者の調べた範囲では不明でした。もしご存知の方がいらっしゃればご一報ください。

中毒を起こしやすい犬種・動物種

知られていません。噴霧した部位を舐めないようにします。

催吐の必要性

不明(参考:ピレスロイド系の場合は誤飲後時間が経過していなければ催吐や活性炭が有効)

治療

拮抗薬はなく対症療法が中心となると思われます。

注意すべきこと

毒性実験は多数行われており、高用量(400mg)の長期間投与では死亡はみられなかったものの、摂取後30分以内に痙攣や運動失調を起こしたと報告もなされており、中毒を起こす可能性があるため使用が多くなる夏季には用法用量を守りペットの口に入れないようにする必要があります。 また中毒に関する量や治療なども報告が存在するが、ディート単体によるものではなくいずれもピレスロイド系との合剤で,論文中にも毒性はピレスロイド系によると記載があるためディート単体での中毒の程度については不明です。また、国内においてはディート単体の製品が多く現時点2023/04/10では動物医薬品等データベースでは副作用の報告はなされていません。

参考

  • 動物用医薬品等データベース ディート https://www.vm.nval.go.jp/?name_product_name=&mfg_dealer_name=&ing_ingredient_name=ディート&medicine_mast_name=&submit=submit&generalname_mast_name=&approval_date_from_year=&approval_date_from_month=&approval_date_from_day=&approval_date_to_year=&approval_date_to_month=&approval_date_to_day=&apply_date_from_year=&apply_date_from_month=&apply_date_from_day=&apply_date_to_year=&apply_date_to_month=&apply_date_to_day=&approve_mast_name=®ulate_mast_name=&efficacy_quality=&using_dosage=&electivemfg_dealer_name=&origin_country= 2023/04/10参照
  • SCHOENIG, Gerald P., et al. Evaluation of the chronic toxicity and oncogenicity of N, N-diethyl-m-toluamide (DEET). Toxicological sciences: an official journal of the Society of Toxicology, 1999, 47.1: 99-109.
  • LORSIRIGOOL, Athip; SUDJAROEN, Yuttana; KULNIDES, Narong. Abuse of Chemical Substances Cause Poisoning in Dogs and Cats: A Review. Indian Journal of Forensic Medicine & Toxicology, 2022, 16.4: 137-143.
  • ANADÓN, A.; MARTÍNEZ-LARRAÑAGA, M. R.; MARTÍNEZ, M. A. Use and abuse of pyrethrins and synthetic pyrethroids in veterinary medicine. The Veterinary Journal, 2009, 182.1: 7-20.(ピレスロイド治療について)
  • イカリジン5.0g/100ml に係る医薬品医療機器総合機構における審査結果:pmda https://www.pmda.go.jp/quasi_drugs/2015/Q20150615002/400092000_22700DZX00374000_Q100_1.pdf 2023/04/11参照