- 2023.08.09
- 中毒
27:ヒスタミン【犬】【猫】【その他】【中毒】
概要
魚やチーズに含まれるアミノ酸のひとつであるヒスチジンを、ヒスタミン産生菌(Morganella morganii, Klebisiella oxytoca, Hafnia alveiなど)が代謝してヒスタミンを生成します。それを食することでヒスタミンによる様々な有害な生体反応を生じます。
臨床徴候(症状)
腐ったマグロを経口摂取した犬では嘔吐が誘発されたという報告がなされています。また実験からは低血圧に陥る可能性が示唆されています。 ヒスタミン単体の投与でも豚とラット では嘔吐がみられました。十二指腸内に投与すると一時的な低血圧がみられる。猫でも同様の反応。しかしヒスタミンを含む酵母抽出物を猫の十二指腸に投与すると胃液の増加と酸性度の増加、さらにヘマトクリットの高値と四肢の浮腫(原文:limb volume)そして筋電図の増強(enchanted)がみられました。ヒスタミンを含むマグロを与えたひよこでは成長率が低下したと報告されています。
原因物質
ヒスタミン(魚の筋肉やチーズに含まれる遊離ヒスチジンが細菌の修飾を受けてヒスタミンに変換される)
中毒量
魚種ごとに筋肉に含まれるヒスチジンの量が異なり、また細菌がどの程度繁殖しているかによって生成されるヒスタミン量は変化するので、コンセンサスが得られた中毒量は不明です。
中毒を起こしやすい犬種・動物種
実験では犬や猫だけでなく豚,鳥類(ひよこ)など幅広い動物に中毒を起こしているため,基本的にこうした動物には鮮度の悪い魚は与えないようにします。
催吐の必要性
不明です
治療
抗ヒスタミン治療を施すと,臨床徴候は通常速やかに和らいでいきます。 ジフェンヒドラミンやクロルフェニラミンなどのヒスタミン受容体拮抗薬H受容体拮抗薬が用いられます。シメチジンなどのH2受容体拮抗薬も効果的な場合があります。軽度の場合には薬物療法が必要ない場合もあります。
注意すべきこと
ヒスタミンの生成には細菌が関与するため、魚を捕まえてからの低温の貯蔵が重要になります。暖かい海域のシイラ(マヒマヒ)の身でも中毒例があります。保管する温度について、複数の研究において10度〜0度以下で保存された時のヒスタミン生成はわずかと報告されています。 0度以下の保管が望ましいですが、難しい場合は10度以下を守ることが重要です。 ヒスタミンは加熱しても壊れにくく、調理の過程で取り除くことが難しいので傷んでいる魚の身はペットに食べさせないことが重要です。ヒスチジンはマグロ・カジキ・カツオ・サバ・イワシ・サンマ・ブリ・アジなどの赤身に多く含まれます。傷んだお刺身を加熱して与えるのも避けましょう。 ちなみに魚の内臓にはチアミンを分解するチアミナーゼが含まれているので、生の内臓も与えないようにしましょう。
参考
- TAYLOR, Steve L.; EITENMILLER, Ronald R. Histamine food poisoning: toxicology and clinical aspects. CRC Critical Reviews in Toxicology, 1986, 17.2: 91-128.
- ヒスタミンによる食中毒について,厚生労働省, https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130677.html 2023/04/22参照
- ヒスタミンによる食中毒について,厚生労働省, https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130677.html 2023/04/22参照
- 神吉政史, et al. 赤身魚およびその加工品からのヒスタミン生成菌の検出. 日本食品微生物学会雑誌, 2000, 17.3: 195-199.