- 2023.08.17
- 中毒
29:ホウ酸【犬】【猫】【その他】【中毒】
概要
ホウ酸団子はゴキブリの駆除によく用いられます。慢性的には犬の精巣萎縮を起こし、急性の中毒では消化器症状を起こします。ホウ酸団子は誘引剤としてタマネギが用いられていることもあるので、そちらも注意が必要です。
臨床徴候(症状)
慢性の投与で雄犬の精巣の萎縮(約500mg/kg/day)、急性の中毒症状としては嘔吐、下痢、流涎が見られると報告されています。
原因物質
ホウ酸(Boric acid)
中毒量
2年間犬のフードにホウ酸を混ぜる実験では50mg/kg/dayの投与では犬に影響はみられず,501.4mg/kg/dayの投与を受けた雄犬では精巣萎縮(testicular atrophy)が見られたと報告されています。 また、犬の半数致死量(LD50 )は2.000 mg/kgとされます。
中毒を起こしやすい犬種・動物種
好奇心旺盛な子犬・子猫は注意を要します。 また、製品によっては誘引剤としてタマネギエキスなどが使用されている場合もあり、タマネギ中毒の危険などもあります。
催吐の必要性
誤飲するとホウ酸は速やかに吸収され、2時間以内に最高血中濃度に達します。そのため早期でなければ催吐は有効でないと考えられます。
治療
少量では除染(胃洗浄など)が必要ない場合もあります。
注意すべきこと
日本で販売されているあるゴキブリ用ホウ酸団子はホウ酸35.0%の製品で1個2gが16個含まれています。1個あたり0.7gのホウ酸団子が含まれています。よって1箱丸ごとには11,200mg含まれているので体重5kgの犬にとっては致死量になります。保管には十分な注意が必要です。無傷の皮膚からはほぼ吸収されませんが,傷ついた皮膚や粘膜からは容易に吸収されます。 動物実験では投与中止してから4日後でも脳からホウ酸が検出された例があり,累積(cumulative action)することに留意します。 また日本で発売されるホウ酸ダンゴには小麦粉やトウモロコシなどを誘引剤として配合しているため誤食に注意が必要です。
参考
- EFSA PANEL ON FOOD ADDITIVES AND NUTRIENT SOURCES ADDED TO FOOD (ANS). Scientific Opinion on the re‐evaluation of boric acid (E 284) and sodium tetraborate (borax)(E 285) as food additives. EFSA Journal, 2013, 11.10: 3407. https://efsa.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.2903/j.efsa.2013.3407
- The European Agency for the Evaluation of Medicinal Products ,COMMITTEE FOR VETERINARY MEDICINAL PRODUCTS BORIC ACID AND BORATES SUMMARY REPORT , https://www.ema.europa.eu/en/documents/mrl-report/boric-acid-borates-summary-report-committee-veterinary-medicinal-products_en.pdf
- 久和茂(監訳),森川玲(訳),2018,犬と猫の毒物ガイド,学窓社
- アースゴキブリホウ酸ダンゴ コンクゴキンジャム, アース製薬, https://www.earth.jp/products/housandango/index.html 2023/05/31参照
- 安全性データシート, LOCTITE® 2620TM HIGH STRENGTH THREADLOCKER , ヘンケルジャパン株式会社, https://image.trusco-sterra.com/pdf/sds/262030_8050__SDS.PDF 2023/05/28参照
- 厚労省 物質特定情報, ホウ素 https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/suido/kijun/dl/k12.pdf 2023/05/28参照
- ホワイトキャップ ゴキブリホウ酸ダンゴ,アース製薬,https://www.earth.jp/products/white-cap-housandango/index.html 2023/06/07参照