- 2023.08.28
- 中毒
30:アジサイ【犬】【猫】【その他】【中毒】
概要
紫陽花は梅雨の時期を彩る美しい日本原産の花です。紫陽花のつぼみには青酸配糖体が含まれておりまれですが摂取した場合は毒性が高いと思われます。 イタリアでの報告しか見つからなかったのですが、アジサイは全て日本の品種を元に作られたもののようで、日本のアジサイでも毒性があると考えられます。
臨床徴候(症状)
犬、猫では流涎、嘔吐、下痢が起きると報告されています。人間の中毒例においては腹痛、嘔吐、発汗、重度で昏睡、痙攣、心血管虚脱(cardiovascular collapse)がみられたとのことであり、犬猫でも重度の場合はこうした臨床兆候を呈する可能性があります。
原因物質
アジサイのつぼみ(flower bud)に含まれるシアン配糖体Cyanogenic glycoside(hydrangin)。 シアン配糖体は消化管で加水分解されてシアン化物( cyanide ion )になり中毒を起こすので、摂取してから中毒を発症するまでに数時間かかることがあります。
中毒量
不明です。花芽にシアン配糖体が高濃度に含まれるため注意が必要です。
中毒を起こしやすい犬種・動物種
犬での中毒例が複数ありますが、猫でも報告があります。 2015年1月から2019年3月までの約5年間に、ミラノの中毒コントロールセンター(CAV)に寄せられたアジサイによる犬の中毒例は7例でした。
催吐の必要性
不明です。※本記事著者注:アジサイの花芽に含まれるシアン配糖体は消化管で加水分解されてシアン化物になることから、早期に催吐して体外から取り除く除染は理論的には有効と考えられます。
治療
個別の中毒の治療についての記載がなく詳細は不明です。 獣医療領域においては、対症療法が中心になると思われます。
注意すべきこと
今回参照した文献はイタリアのもので、イタリアで栽培している種類の報告でした。西洋のアジサイも日本の原種が元になっているものの、現在では様々な園芸品種があります。日本に自生するガクアジサイやそれを原種とする日本の栽培品種についての毒素や中毒量に関する研究は進んでいません。もし国内でアジサイによる犬や猫の中毒を経験された先生がいらっしゃれば、ご一報ください。また、紫陽花の蕾が最も毒性が高いということだったので開花前で蕾が大きく目立ってくる4月5月頃は特に注意が必要かもしれません。
参考
- SERRANO, Rita. Toxic plants: Knowledge, medicinal uses and potential human health risks. Environment and Ecology Research, 2018, 6.5: 487-492.
- BERTERO, Alessia, et al. Plants and zootoxins: Toxico-epidemiological investigation in domestic animals. Toxicon, 2021, 196: 25-31.
- CALONI, F., et al. Plant poisoning in domestic animals: Epidemiological data from an Italian survey (2000–2011). Veterinary record, 2013, 172.22: 580-580.
- 三河植物観察, アジサイ, https://mikawanoyasou.org