- 2023.06.12
- 中毒
9:タバコ(ニコチン)【犬】【猫】【その他】【中毒】
概要
タバコはペットの誤飲の中でも比較的よくみられます。 タバコに含まれるニコチンによる中毒は1kgあたり1mg程度から発現するといわれます。タバコ一本には銘柄により約7〜24mgのニコチンが含まれています。小型犬や中型犬ではタバコ1本の誤食でも中毒を発症する可能性があります。タバコを漬けた液体はニコチンが高濃度に溶出するのでペットの周りには絶対に置かないようにしましょう。 アメリカのタバコの誤飲の報告では約94.4%(全848例中801例)が犬であり、特にわんちゃんの誤飲には注意すべきものです。前述の報告でが4%が猫の誤飲と報告されているので、もちろん猫ちゃんでも注意すべき物質です。
臨床徴候(症状)
症状としては交換神経の刺激による高血圧や嘔吐、流涎のほかふるえや頻脈、頻呼吸のあと副交感神経刺激による低血圧、徐脈、呼吸抑制がみられます。 ニコチンも植物の作り出すアルカロイドという物質の仲間です。
原因物質
タバコの主な毒性成分はニコチンです。ペットの交感神経と副交感神経両方に作用します。最初は交換神経を刺激し、その後副交感神経を刺激するので中毒を起こすと症状が移り変わっていきます。
中毒量
誤食してしまった時に犬が死に至る量(経口致死量)は1kgあたり9.2mg程度と報告されています。しかし症状は1kgあたり1mgの摂取で出てくるため小型犬〜中型犬ではタバコ1本の誤飲でも中毒を発現するおそれがあります。タバコの外箱に記載されているニコチンの量はタバコ本体ではなく,吸引する煙に含まれるニコチンの量になります。 タバコ本体に含まれるニコチンの量は記載されていませんが、タバコ一本に約7〜24mg程度含まれているとされています。
中毒を起こしやすい犬種・動物種
すべての犬種で起こり得ますが,好奇心旺盛な子や子犬では注意が必要です。
催吐の必要性
摂取して時間が経っていなければ胃を空にして活性炭を投与するのは有効です。
治療
対症療法が中心となります。
注意すべきこと
タバコを水につけると1時間でタバコ本体の50〜70%のニコチンが溶け出すといわれ,高濃度になるため注意が必要です。 誤飲した場合はタバコ本体か,タバコを漬けていた液まで飲んでしまったかは重要な情報になります。 ペットの鳥では灰皿の中の吸いったあとのカス(cigarette butts left)による中毒も報告されています。ペットの周りにはタバコを置かないこと、吸い殻やタバコを漬けた液体がある時はすぐに処分するなど環境の整備が重要です。
参考
- NOVOTNY, Thomas E., et al. Tobacco and cigarette butt consumption in humans and animals. Tobacco Control, 2011, 20.Suppl 1: i17-i20.
- 福岡県薬剤師会 タバコの誤食 https://www.fpa.or.jp/library/kusuriQA/33.pdf 2023/01/15参照
- 今日の臨床サポート 急性ニコチン中毒 https://www.fpa.or.jp/library/kusuriQA/33.pdf 2023/01/15参照